最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)1016号 判決 1949年3月05日
主文
原判決を破毀する。
本件を東京高等裁判所に差戻する。
理由
辯護人大塚喜一郎の上告趣意について。
原判決は、本件強盗の事実を認定する證據として、出刄庖丁、菜切庖丁、角棒(昭和二二年押第一四七一號の一乃至三)の各存在を舉示している。しかるに、原審公判調書を精査するも右押収物件について、舊刑訴法第三四一條第一項の證據調手續を履踐した證跡がない。しからば、原判決は適法な證據調を經ない證據物を證據とした違法があるのであって、この點において原判決は破毀を免れないものである。
よって、同辯護人のその餘の論旨、及び辯護人山田盛の上告趣意についての判斷を省略し、刑訴施行法第二條、舊刑訴法第四四八條ノ二、第一項に從い、主文のごとく判決する。
右は全裁判官一致の意見である。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)